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Sandfish Records Diary

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Alison

 その夜、僕は先輩が運転する車の後部座席に座っていた。確か細かい雨が降っていたような気もするけど、はっきりとは覚えていない。僕は大学生で、いろんなことに少し退屈していた頃だった。車にはあと2人友達が乗っていた。僕は彼らの会話にのるでもなくのらないでもなく、時折窓の外の暗闇を見つめながら、笑ったり曖昧な相づちをうったりしていた。

 “Love Is Strange”が流れてきたのは、そんな車の中でだった。ミッキー&シルヴィアのオリジナルとはまた違う、清涼感と寂寥感を持ち合わせたアコースティックな演奏がとても素敵だった。「これ誰ですか?」と先輩に訊ねると、エヴリシング・バット・ザ・ガールのEPだと教えてくれた。それからもカヴァー曲がつづいた。ブルース・スプリングスティーンの“Tougher Than the Rest”、エルヴィス・コステロの“Alison”、シンディー・ローパーの“Time After Time”。どれも素晴らしかった。そこにはひとつの世界観があったし、尊厳のようなものが感じられた。僕はすっかり魅せられてしまい、繰り返しこのCD をかけるようリクエストした。先輩は僕の言う通りにしてくれた。耳にうるさくなかったのか、誰も文句は言わなかった。きっと、おしゃべりに忙しかったんだと思う。

 昨夜、久しぶりにエルヴィス・コステロのファースト・アルバム『My Aim Is True』を聴いた。このアルバム・タイトルは、“Alison”の歌詞の一節から取られていて、もちろんこの中に収められている。久しぶりに聴いた “Alison”は、やっぱりいい曲だった。一緒に口ずさんでみたら、もっといい曲に思えた。僕はエヴリシング・バット・ザ・ガールのヴァージョンを思い出し、車の中でこの曲を聴いた夜のことを思い出した。

 “Alison”は、純粋すぎるが故に屈折してしまったラブ・ソングだ。まわりくどい。でも、そこがいい。どんなにシンプルでいようとしたところで、なかなかそうはなれないのも本当だから。

 今夜は、藤沢駅の近くにある「家鴨長屋」でご飯を食べようと思っている。地元では美味しいと評判のお店だけど、今月か来月かには閉店すると聞いている。なかなか行く機会がなかったけど、ずっとあるもんだと思っていたから、なくなるのはやはり残念だ。今夜、蟹あんかけチャーハンを食べようと思っている。そして、マスターに会えたらいいなと思っている。

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2010-02-17 09:06 | diary | Comments(0)
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