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Sandfish Records Diary

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40年後、私的老後予想図「冬の朝」

しんしんと冷えた冬の朝。
午前6時起床。まだ外は薄暗い。
のっそりと布団から這い出し、
スリッパを履いて、冷たい台所に立つ。
お茶をいれ、釜上げのシラスと白菜の漬け物、
白いご飯、作り置きの味噌汁を食べる。
時計の秒針が、カチカチと時を刻む。
思えばずっとひとりで暮らしてきた。
テーブルをはさんで向き合い、
お互いの今日1日の予定をぽつぽつと話すような
そんな人も僕にはいない。

朝食の後は、暖かく身支度をし、
お気に入りのニット帽をかぶって、
散歩に出かけるのが、いつもの日課だ。
ここ数日顔を見ないあいつはどうしているのだろう?
今日は会えるだろうか?
それとも…、ひょっとしてもう…。

玄関を出る頃、
太陽はもう高いところまで昇っていた。
澄み渡るようないい天気で、
きりりと冷えた空気が、皺だらけの僕の頬を刺した。
僕はいつものコースを、いつものペースで歩いていく。
すれ違う顔見知りには、軽く会釈をする。
学校に急ぐ子供達が、かたわらを走り抜けていく。
僕は、白い息を吐きながら、
いつものコースを、いつものペースで歩いていく。

豆腐屋の角を曲がり、
自動販売機でマイルド・セブン・ライトを買ったら、
公園のベンチでひと休み。
タバコに火をつけ、
浮かんでは消える煙を、ぼんやりと眺める。
その儚さに、もう会うことのない人達を想う。
太陽のまばゆい光が、この皺だらけの頬を照らしても、
気にしたりしない。
長く曲がりくねった道の果てに、
1年が終わるこの季節に、
僕は今こうして「ただ」生きている。
そして、これで十分なんだと思っている。

ベンチを立って、顔をあげると、
数日ぶりに会う友達が、こっちに歩いてくるのが見えた。
僕が笑いかけると、そいつも僕に微笑んだ。
そして、こんなことを僕に言うのだ。

「よぉ、今日はジョン・レノンの命日だね」

もちろん、忘れたりしない。
そいつと僕は、ベンチに並んで座り、
皺くちゃな手をしゃかしゃかと振って、
ギターを弾く真似事をした。
長く曲がりくねった道の果て。
1年が終わるこの季節。
いくつになっても、僕らは変わらないのだ。

(2010/12/5「持ち寄りPotluckナイト@バー・ケインズ」にて朗読)
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by sandfish2007 | 2010-12-07 08:03 | diary | Comments(0)
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