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Sandfish Records Diary

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ノルウェイの森

 退屈なアルバイトが終わったのは、夕方の17時過ぎだった。外はもう暗かったけど、そんなに寒くなかった。お酒を飲みに行きたいと思ったが、時間的に少し早かったし、今度の火曜日には馴染みのお店の5周年パーティーがあるので、その分の資金も残しておかないといけない。僕は少し考えてから、まっすぐ帰ることにした。途中のスーパーでビールを買いたい衝動に駆られたけど、それも我慢した。部屋に戻ると、1合分だけ残っていた日本酒を飲み、切り干し大根をつまんだ。テレビをつけると、シマフクロウの神々しい姿が目に入った。翼を広げると180センチにもなるのだという。そして、今ではもう100羽しかいないのだという。

 来週、茅ヶ崎に映画『ノルウェイの森』を観に行くことになった。小説は何年も前に読んだが、内容はほとんど思い出せなかった。押し入れの中のダンボールを開けた。そこにはたくさんの本が無造作に詰め込まれていた。僕はホコリまみれになりながら、どうにか『ノルウェイの森』の上下巻を見つけ出すことができた。

 体についたホコリを払い、ロン・セクスミスのファーストをかけた。それから日本酒をひと口すすって、『ノルウェイの森』の上巻を読み始めた。映画に行く前に記憶を辿っておくのが目的だった。でも、丁寧に書かれた文章があまりに見事で、気がつくとじっくりと読み進めていた。これでは時間がかかってしょうがないと、意識して乱暴に読み飛ばしてはみるものの、やはり腰を据えて読んでしまう。そのスピードに合わせて、僕の記憶も蘇ってきた。そして、改めていい本だなと思った。

 鼻をかもうとティッシュをとったら最後の1枚だった。トイレでは、トイレット・ペーパーがカランという音を立てた。僕は風呂にザブンとつかって、湯船の中で『ノルウェイの森』を読みすすめた。この本は、寒い季節に部屋を暖かくして読むのがふさわしい気がした。湯船の中で読むのも、それと似たようなものだった。

 風呂からあがって、ブルース・スプリングスティーンの『Nebraska』をかけた。そして、本のつづきを読んだ。主人公のワタナベくんが、屋上で蛍は放した。蛍が飛び去った後も、その光の軌跡は闇の中でしばらくの間さまよいつづけていた。

「僕はそんな闇の中に何度も手を伸ばしてみた。指はなにも触れなかった。その小さな光はいつも僕の指のほんの少し先にあった」

 目に見えない帳が落ち、静かな夜が、もっと静かになったような気がした。

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2010-12-12 10:17 | diary | Comments(0)
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