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Sandfish Records Diary

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これから映画館へ行くの巻

 リンゴをまるかじりした朝。ぎっしぎしに詰まったゴミ袋を持って玄関を開けると、外は薄曇りで、空気はきりりと冷えていた。でも、今は暖かい陽射しが降り注いでいる。僕の部屋では、ビートルズの『Rubber Soul』を流れている。今日は茅ヶ崎の映画館まで『ノルウェイの森』を観に行く。

 読み返した小説の内容を、僕は自分でもびっくりするくらい覚えていなかった。でも、読み進めるうちに、そうなった理由がなんとなくわかるような気がした。きっとこの物語は、若い頃の僕にはいささか儚すぎたのだろう。ひとりでも生きていける力をつけることは、僕にとって大きな意味があったし、そのためにはあまり淋しがったり悲しがってるわけにはいかなかった。別になにか事情があったわけじゃないのだけど、どういうわけか僕は、小学生くらいからずっとそんなことを考えてやってきたのだ。

 『ノルウェイの森』を読み終えてしばらくの間、心にやり場のない気持ちがずんと残ったのを覚えている。そういう気分に、きっと僕はうまく馴染めなかったのだと思う。だから、一種の自己防衛として、僕はこの物語のことを忘れ、次の楽しいことへ移行していったのかもしれない。まぁ、昔のことなんでよくわからないけど。もしそうだとしたら、それはそれでナイーヴな話だな。

 久しぶりに読んだ『ノルウェイの森』は、とても面白い本だった。物語は、やり場のない気持ちを含んだまま、僕の体にしっくりと馴染んだ。きっとこの先何年かたっても、僕はこの本の内容を思い出すことができるだろう。僕は大人になり、儚さを儚さとして受け入れることが、少しづつできるようになった。そして、「ひとりで生きていける」ということの意味もまた、変わったのだろう。そんな気がする。

 そんなわけで、今日はリンゴをまるかじりして、ビートルズの『Rubber Soul』を聴いて、僕は『ノルウェイの森』を観に行く。映画館なんて久しぶりだな。楽しみだな。

 MIYAI
by sandfish2007 | 2010-12-20 11:22 | diary | Comments(0)
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