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Sandfish Records Diary

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自衛隊の若者と話した夜

 「バラカン・モーニング」を聴く朝。一昨日、同番組でエドウィナ・ヘイズの“Long Highway”がかかったことを、友人が教えてくれた。あー、聴きたかったなぁ。もしよかったら、誰かリクエストしてくださいな。今度こそ聴くので。

 リクオさんがツアーから一旦帰宅したので、馴染みのバーで飲んだ。日付が変わるくらいの時間だった。ツアーの話を聞いたり、災害の影響についてぽつぽつと話した。この夜、たまたま自衛隊に勤める若者が来ていたので、自然と彼も交えて話をするようになった。彼は宮城沖まで遺体の回収に行ってきたという。ガスで膨れた遺体をひとつひとつ海から上げていく作業は、訓練を積んだ自衛隊の隊員達にも想像以上の精神的ダメージを与えた。長い時間つづけて作業にあたるのは危険という判断から、一旦戻されたのだという。「現実はテレビの報道とは違う」と彼は言った。「地元の人達が、僕らにひどい罵声を浴びせてくる。略奪や強奪、強姦も行われている」と。僕は言葉を失うしかなかった。なぜ僕は「日本人は被災しても秩序正しい」という報道を、こんなにも素直に信じることができたのだろう?もちろん、被災地の人達がみんなそうだというわけではない。ほんの一部だろう。しかし、この未曾有の混乱の中で、そうした悲劇に傷ついている人々を目の当たりにしてきた、彼の言葉は重かった。

 彼はこんなことも言っていた。「東電の下請け会社の人が、原子炉にいるのはおかしい。なぜ今こそ自衛隊に任せてくれないのか。税金をもらっている以上、自分達はいつだって命をかける覚悟はできている」と。リクオさんが「特攻隊になってはいけないと思う」と言った。そうしたヒロイックな幻想は危険だと。僕もそう思う。しかし、彼のような強い意識をもって行動している人達がいるおかげで、僕らの生活は守られ、復興への足がかりが築かれていくのも、また現実なのだ。自衛隊のような強い命令系統が、現地での作業を効率よくこなす上で必要なのも理解できる。もし自分がその場にいたら、僕も彼と同じような気持ちにかられるかもしれない。でも、僕が思うのは、そういう「空気」が危険だということだ。では、彼らがやらずに誰がやるのか?そう自分に問い正したとき僕は語る言葉を失してしまう。

 だから、最終的に僕は「くれぐれも気をつけて」と言うことしかできなかった。自衛隊の彼は、リクオさんの話を聞いて何度もうなずいていた。彼もまた混乱を胸に抱えているのだと思った。当然のことだ。でも、現場の惨状を見てきた彼には、迷っている時間などないのだろう。だから、仲間と士気を上げて、命をかけると口にするのかもしれない。僕はそんな風に感じた。しかし、そうした「空気」はやっぱり危険だと思う。

 ひと通り話し終えてからも、僕はなかなか帰る気分になれなかった。気持ちをクールダウンする必要があった。もう手持ちのお金はなかったので、ツケで飲ませてくれとマスターに頼んだら、リクオさんが僕の追加分を払ってくれた。店を出たのは、午前4時を過ぎていた。町がいつもよりもずっと静かで、まったく無音に思えた。なぜかそんな気がした。

 今朝も「バラカン・モーニング」では、被災を意識した曲が流れ、被災のことを語ったメールが読まれている。先はまだまだ長い。僕らまでがしょぼくれてるわけにはいかない。元気を出していこう。

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2011-03-30 08:46 | diary | Comments(0)
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