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Sandfish Records Diary

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Arcadian Driftwood

 ときどきコーヒーにクリープを入れる。たいていは前夜に深酒をしたり、心が弱り気味なときに入れる。まぁ、そんな朝もたまにはある。

 今の部屋に引越して来て最初にかけたレコードは、ザ・バンドの『Northern Lights - Southern Cross』だった。この中に収められている“Arcadian Driftwood”は、カナダを追われたフランス人の歴史を歌った曲だ。アーケイディアは彼らが住んでいた土地の名前。七年戦争の敗北後、彼らの多くは、歌のタイトルそのままに、流木のようにニューオーリンズ等の南部へと流れ着いた。しかし、受け入れてもらえなかったため、彼らは都市部から周辺の沼地へ移り住んでいく。そこで奴隷やネイティブ・アメリカン達と交わり、独特の文化を育んでいく。ケイジャンとは、そんな彼らが作り出した文化だ。この曲を書いたロビー・ロバートソンは、カナダ人でネイティブ・アメリカンの血をひいている。

 そんな話を『レコード・コレクターズ』で連載されているジョージ・カックルの「アメリカン・ロック・リリック・ランドスケイプ」で読んだ。歌の内容は以前から知ってはいたが、改めて歌詞と照らし合わせて追ってみると、これまでとはまた違った角度で光が当てられ、胸に沁みるものがあった。

 この歌が持つ旅情や諦観が好きだ。このアルバムで、ザ・バンドはひとつの終焉を迎える。豊かな大地を旅してきた彼らが最後に辿り着いた場所。そこにはなにもなく、ただ頭上に満天の星空が輝いていた。このアルバムがもつそんな世界観に、僕はずっと憧れを抱いている。

 MIYAI
by sandfish2007 | 2011-05-11 09:24 | diary | Comments(0)
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