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Sandfish Records Diary

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スクール・デイズ その1

<Ramones “DO YOU REMEMBER ROCK’N’ROLL RADIO?”>

定期テストが終わり、数日後には答案を返された。
言うまでもなく、結果はぱっとしなかったが、
別に気にならなかった。
中学3年ということもあり、親や先生はぶつぶつと僕に小言を言った。
でも、そんなものはすべて、
右から左へと流れていくだけだ。
なぜって、僕はこの日を指折り数えて待っていたのだから。

今日は、1学期最後の日。
数日前に、長かった梅雨が終わり、
天気予報の欄には、晴れのマークがずらりと並んだ。
太陽はまるで殺人者のようだ。
鋭利なナイフみたいに光り、
僕らを容赦なく照りつけ、じりじりと地面を焦がし、
肌を黒く塗りつぶしていく。
今、僕らは解き放たれようとしている。
誰もが解放されるのを待っている。
そんな季節が、今年もまたやって来たのだ。

ラジオのパーソナリティーが、1日中陽気な音楽を流す。
曲を紹介する口ぶりも、なんだか楽しげだ。
ラモーンズやビーチ・ボーイズ、
そして、僕の大好きな、
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズも。
僕はラジオのロックン・ロール番組にかじりつく。
お気に入りは、レディオ・ケインズの「VOICES INSIDE」だ。
頭の中はロックン・ロールのことでいっぱいだ。
もしこの世界に、ロックン・ロールよりも意味のあるものが存在するならば、
教えてほしいものだ。
そう、僕は今、恋をしている。
ロックン・ロールと、ひとりの女の子に恋をしている。

学校からの帰り道、僕らはいつになくはしゃいだ。
話題の中心は、8月にある野外コンサートのことだった。
僕らはお金を持っていないから、会場の中には入れない。
だったら、外の駐車場に陣取って、
漏れ聞こえてくる音楽を楽しもう。
そして、どこの誰よりも盛り上がってやろう。
もし楽しくてしょうがなくなったら、
そのまま野宿でもすればいい。
そんなことを仲間と話していると、
僕らはもう叫びだしたくなるのだ。

道ばたには夏草が茂り、その湿った香りが鼻孔を刺激した。
無造作に1枚ちぎって噛んでみると、苦い味がした。
少年のような、大人なような、そんな味がした。

ふいに仲間のひとりが僕をつついた。
顔を上げると、20メートル先を3人の女の子達が歩いていた。
僕はすぐに一番右端にいる子に目を奪われた。
彼女こそ、僕が恋をしている女の子だった。
シャツの袖をまくり、
スカートは少し短めに折り込まれている。
長い髪は丁寧にまとめられ、
白いうなじが覗いていた。
うっすらとにじんだ汗が、ほんの一瞬、
太陽の光できらきらと光ったように見えたから、
僕はまるで魔法にでもかかったような気分だった。

仲間のひとりが僕の背中を強く押した。
それは無言の合図だった。
僕はそのまま彼女に向かって走り出した。
鞄が肩からずれて落ちそうになりながら。
熱風がシャツの胸元やわきの下から入ってきた。
彼女の背中がぐんぐんと近づいてくる。
胸の鼓動が大きく音をたてた。
僕は彼女の肩に、そっと手を触れた。

太陽は燦々と輝き、
白い雲が自由に空を飛び交っている。
今、誰もが解放されるのを待っている。
僕も。そして、きっと彼女も。
だから、答えはひとつに決まってる。
目一杯楽しもうじゃないか。
パーティーはこれからなんだから。

<Connie Francis “VACATION”>

(2011.8.20 "Voices Inside"「スクールデイズ:青春編・夏」@Bar Cane'sにて朗読)
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by sandfish2007 | 2011-08-21 10:57 | diary | Comments(2)
Commented by jerry at 2011-08-22 01:32 x
雨で野外だったためテントを張っても、PAと大きなスピーカーはセットできず、残念ながらライヴで歌うことは出来ませんでしたが、ライヴ前のリハーサル中に、しっかりと時間をおつくり頂いてデル・シャノンを歌わせてもらいました!

楽しかったです、なにせ生バンドをバックに歌ったのは20年ぶりでした、興奮しましたよ~。

降り止まない、空に向かって、CCRの歌詞を叫んだら、すぐさま、雨を見たかいのイントロが!「古いの良く知ってるね~」って感心されました。 やっぱり音楽って最高ですね、年なんて全く関係ありません。すぐにひとつになれます。

メンバーは、来月にサンプラで行われるベンチャーズの来日公演にもメンバー全員で駆けつけるようです。

強面のリードギタリストの1963年生のヴィンテージモデルは、なんとシリアルナンバー「0004」。中古で250万円でご購入され、その後、ベンチャーズの前座の際、メンバーからサインを入れてもらい、今でもお使いになっているお宝でした。

数年前に京都にお住まいのベンチャーズファンから、750万円で譲ってくれないか?とのオファーもあったようですが、迷うことなくお断りしたとのことでした。
Commented by sandfish2007 at 2011-08-22 10:48
◇jerryさん
雨は残念でしたが、いいバンドの演奏に合わせて歌うのは、さぞや気持ちよかったことでしょう。いいなぁ。CCRへのレスポンスの良さも楽しそう。にやにやしちゃいますね。

リードギタリストさんは、すごいギターを持っているのですね。一生の宝物。それだけ夢中になれる音楽に出会えたその人たちは幸せですね。

MIYAI
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