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Sandfish Records Diary

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スクール・デイズ その2

<Graham Parker “BACK TO SCHOOLDAYS”>

夏の夕立はいつだって突然だ。
僕は入社2年目で、この日、営業まわりをしていた。
さっきまであんなに晴れていた空が急に暗転し、
雷の音が聞こえたかと思ったら、
激しい雨が降り出したのだ。

僕は二車線の道路を渡ろうとしていたところだった。
横断歩道のちょうど目の前に、
シャッターの閉まった古い商店があったので、
僕はそこの軒下に逃げ込んだ。
そして、濡れたシャツをハンカチで拭きながら、
しばらくの間、
薄闇に染まりだした空が、夏の雨に煙っていくのを、
ぼんやりとながめていた。

道路を渡ったちょうど真向かいに、
僕と同じように雨宿りをしている女の人の姿が見えた。
それが「彼女」であることに、僕はすぐに気がついた。
かつての長かった髪は短くカットされ、
細い体形はよりほっそりとしていたけれど、
立つときに右足を少し下げる姿勢と、顎をひく仕草は、
昔のままだったから。

中学3年の夏、僕は彼女に恋をしていた。
初めて二人で出かけたのは、8月のお盆を迎える少し前だった。
彼女は淡いグリーンのワンピースを着て、
待ち合わせの場所に立っていた。
それまで制服姿しか見たことがなかったから、
やけにどきどきしたのを覚えている。
確か、僕らは電車に乗って、
港が見える公園まで出かけたのだ。
よく晴れた日で、暑くて、街はまぶしい光で溢れていた。
僕らは夏の強い日射しを浴びながら、
ただただ歩きつづけた。
歩きながら、学校でのこと、進路のこと、
共通の友達のこと、好きな音楽のこと等を話した。
でも、会話はどうしても途切れがちになり、
その都度、沈黙が訪れてしまうのだ。
僕らふたりの間には、こぶしひとつくらいの隙間があいていて、
そこを夏の風が通り抜けていった。
お腹はほとんど空かなかったから、
大きな中華マンをひとつ買って、ふたりで分けて食べた。
夕立にあったのは、そんなときだった。

突然の激しい雨だった。
少し先にレンガ造りの倉庫が見えたので、
僕らはその軒下へ走った。
彼女は、まだ食べかけ中華マンを手に持っていたはずだが、
途中で落としてしまったようだった。
遠くで雷の鳴る音がし、
地面を打つ雨音は、さらに激しさを増していた。
気がつくと、僕らはぴったりと体を寄せ合って立っていた。
濡れたシャツ越しに、彼女の体温がはっきりと伝わってきた。
彼女はいつものように右足を少し後ろに下げて立ち、
顎をひいたまま、じっと黙っていた。
僕はなにか話しかけようとしたけれど、
なにをどう話したらいいのかわからないまま、
彼女の肩から伝わってくる温もりを、
夕立があがるまで、感じていた。

あれから10年がたち、今また夕立が降っている。
そして、道の向こうでは彼女が立っている。
彼女が僕に気づいているかどうかは、
この距離だと、はっきりとはわからなかった。
こちらを見ているようにも思えたが、
定かではない。
雨がやむまでに、信号は青に変わり、また赤になった。
そんなことを何度か繰り返した後、
唐突に雨は上がり、夕立の後の涼しげな風が吹き始めた。

車の往来が止まり、歩行者用の信号が青に変わった。
僕は、ゆっくりと横断歩道を渡り始めた。
向こうからは、彼女が歩いてくるのが見えた。
彼女も僕のことを見ているのが、はっきりとわかった。
僕らの距離は少しづつ縮まっていった。
そして、手が届くくらいになったとき、
僕らは、何も言わずにすれ違った。

なにか話しかけようとはした。
でも、僕はなにをどう話しかけたらいいのかわからなかった。
よく晴れた日の突然の夕立。
雨上がりのきらきらと輝く横断歩道。
なんだか、すべてが10年前のあの日のようだった。

<The Kinks “SCHOOLDAYS”>

(2011.8.20 "Voices Inside"「スクールデイズ:青春編・夏」@Bar Cane'sにて朗読)
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by sandfish2007 | 2011-08-22 10:27 | diary | Comments(5)
Commented by える at 2011-08-22 23:21 x
ええ詩、うた書きますね!曲つけたいっすね!あと、見に行きたい!
Commented by jerry at 2011-08-23 02:04 x
港の見える丘公園!!!

想い出がいっぱいの甘酸っぱいスポットです!

DJ:erika とデートしたいです(笑)。 笑っていますが、かなり本気です(笑)。

アナログレコードが好きな若い女性って魅力があります。

親子くらい年が離れていても、やっぱり若いって最高です。

金曜日の夜が楽しみでなりません。絶対にデートに誘います!

また、レポートしますね(笑)。 
Commented by sandfish2007 at 2011-08-23 08:30
◇えるくん
どうもありがとう。曲をつけるなら短くしないといけないね。

◇jerryさん
えっと、港が見える公園です。もちろん、あそこをイメージしていただいても問題ありませんが。いいところですよね。

erikaさん、デートにつきあってくれるといいですね。歳の差を超えて、音楽話で盛り上がってくださいませ。がんばってください。

MIYAI
Commented by 法律屋さんFrom大阪 at 2011-08-25 00:24 x
宮井さん、こんばんは。これって本当の体験談ですか?
思わず“何やってんだよー、何で声かけないんだよー”って、自分のことのように感情移入して読んでしまいました。もし、本当の体験談だったら、ここで声かけてたら彼女となにかご縁があったかもしれなかったのにね‥
Commented by sandfish2007 at 2011-08-25 01:01
◇法律屋さん
いえいえ、単なる作り話です。イベントのテーマに合わせて書きました。まぁ、もし現実だとしても、僕はきっと声をかけないと思いますが。

MIYAI
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