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Sandfish Records Diary

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Wrecking Ball

 昨夜からずっと心の奥が震えている。ブルース・スプリングスティーンの『レッキング・ボール』を聴いたからだ。その覚悟に、勇気に、英知に、表現者としての技量の深さに、僕はただただ圧倒されたのだ。

 サウンドの道筋こそは、この10年間でスプリングスティーンが取り組んできた芳醇なルーツ・ミュージックに、独自のロックを融合させたものと言える。個人的には、いわゆるEストリート・バンド的な音よりも、こちらの方が今のスプリングスティーンにとって自然な音なのだと思う。彼が語ろうとしていることを表現するには、自らを歴史の中に置いて、その一部として同化させる必要がきっとあるのだろう。
 しかし、昨夜聴いた音楽は、そんな僕の曖昧な想定や予想を大きく上回るものだった。すべての歌が、想像を遥かに超えて広かった。時間軸的な広がりにおいても、立地的な広がりにおいても、心情的な広がりにおいても、巨大で、まるで怒りと祈りと祝祭が渾然一体となって押し寄せてくるようだった。聴き進むにつれ、僕は言いようもない気持ちにかられた。叫び出したいのに、言葉は見つからず、泣きたいのに泣く事もできなかった。しかし、力強かった。明らかに。間違いなく。それは希望と勇気が僕の心をノックしたからだった。

 これは今のスプリングスティーンだからこそ作り得た作品だと思う。アメリカの深刻な不況、僕らにとっては震災と津波と原発。一握りの人間が今も利権をむさぼり、誰一人として起きたことへの説明責任を果たそうとしない。そうした厳しい時代の現実に対する深い洞察と、老練にして純粋な魂が、強烈な説得力を伴って、今の時代と激しくリンクしている。
 ロックン・ロールが時代を映し出す鏡としての役目を担っていたのは、もう随分前のことだ。そのロックやフォークが、この時代においてこれほどの意味と力を持ちうるのだということに、僕は正直驚いている。だから、今は少し混乱しているのかもしれない。混乱しながら震えている。暗闇の中に希望の灯を見つけたときのように、心の奥が清々しく震えている。

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2012-03-23 07:51 | diary | Comments(0)
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