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Sandfish Records Diary

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Shackled and Drawn

 シャツについた汗の感じがずっと大好きだった
 若いの、引っ込んでるんだ
 大の男に仕事をさせてくれ
 大の男に仕事をさせろ、こんなことは間違ってる
 今朝目を覚ますと、手足を縛られ、やせ衰えていた
 
 ギャンブラーはサイコロを転がし
 労働者は金を支払う
 銀行家の丘は、今も裕福で羽振りがいい
 銀行家の丘で、パーティーはますます盛況だ
 俺達はその丘のずっと下の方にいる
 手足を縛られ、やせ衰えて
 
 手足を縛られやせ衰えて、手足を縛られやせ衰えて
 若いの、石を拾って、持っていくんだ 
 歌を唄う他に哀れな男になにができる
 今朝目を覚ますと、手足を縛られやせ衰えていた

 ブルース・スプリングスティーン『レッキング・ボール』の3曲目“Shackled and Drawn”は、仕事を失った初老の男の歌だ。彼にまだ働けるだけの気力や血気さがあることは、スプリングスティーンの熱っぽいヴォーカルから伝わってくる。彼にも長年従事していた仕事があった。それをなにかの事情で奪われた。仕事を失うことは尊厳を傷つける。わずかな求人は若者にもっていかれてしまう。そんな若者達を疎ましく感じている自分に気づき惨めになる。賭博場には彼のような男達が集まり、人生の勝負をし、なけなしの金をむしり取られていく。丘の上を見れば、いい暮らしをしてる奴らがいるのは明白だ。それなのに自分は働くことさえできない。これを正しいというのか?まっとうに働いて人並みの生活をすることが、そんなに求めてはいけないことなのか?日々やることがなく、必要とされる場所もない。がんじがらめでどん詰まり。歌はこんな風にはじまる。

 灰色の朝の光がカーテンの隙間から射し込む
 1日だけ歳をとり、墓へと近づく
 墓へ近づき、夜が明ける
 今朝目を覚ますと、手足を縛られやせ衰えている
 
 曲調も歌詞の内容も、さながら古いフォーク・ソングのようで、演奏にも労働歌のような力強さがある。バスドラムが手拍子を促し、コーラスが共に声を上げようと求めてくる。そして、曲の最後にリン・コリンズの“Me and My Baby Got Our Own Thing Going”の一節がサンプリングされて流れてくる。「Come on everybody to stand up and be counted tonight.(今夜、恐れることなく自分の意見や信念を叫ぼう)」。それに呼応するようにスプリングスティーンが雄叫びのような声を上げる。この瞬間がもっとも重要で、もっとも美しい。哀れな男に歌を唄う以外に一体なにができるというのか?いや、彼にはできることがたくさんあるはずなのだ。

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2012-03-26 07:56 | diary | Comments(0)
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