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Sandfish Records Diary

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This Depression

 ベイビー、今までにも落ち込んだことはあるが
 こんなに打ちひしがれたことはない
 今までにも、どうしたらよいのかわからなくなったことはあるが
 これほど途方に暮れたことはない

 告白するよ
 僕には君の優しさが必要だ
 こんなどん底なとき
 僕には君の暖かな心が必要なんだ

 ブルース・スプリングスティーンの新作『レッキング・ボール』は、6曲目の“This Depression”で、悲しみの底へと辿り着く。この歌が語りかけてくるのは、暗い影に心を支配されることの恐ろしさだ。途方もない徒労感が気力を奪い、可能性は失われ、希望の光は見えない。シンセサイザーのひんやりした響き、深いエコーをかけたドラムの音が、暗く蒼い海の底へと沈んでいくようなサウンドを作り出している。
 圧倒的な悲しみ。とてもひとりでは耐えられそうにない。しかし、この歌の主人公には、愛する人がいる。家族だろうか。恋人だろうか。すべてを失った今も、その人は彼のそばにいる。そのおかげで、彼はどうにか正気を保つことができている。絶望の一歩手前で立ち止まり、朝の光が射し込むのを待っている。スペイシーなトム・モレノのエレクトリック・ギターが、そんな男の浮かび上がろうとする心を、もがくようなトーンで描き出す。男はその人に言う。「I need your heart」。ここでは「僕には君の暖かな心が必要なんだ」としたけれど、彼が必要としているのは、その人の存在そのものだろう。

 いつも強かったとは言わないが
 これほど自分を弱いと思ったことはない
 すべての祈りは報われず
 ずっと愛にも縁がなかった
 でも、見捨てられたわけじゃない
 今、朝の光が、
 夜が明けようとしている

 そして、彼の心にも光は射し込むことになる。アルバムは、長く暗いトンネルを抜け、かすかな光に向かって歩み出すのだ。

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2012-03-30 11:40 | diary | Comments(0)
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