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Sandfish Records Diary

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ロジャー・ダルトリーとロン・セクスミスを観てきた

 友人の厚意もあり、ロジャー・ダルトリーとロン・セクスミスのライヴを2夜連続で観ることができた。どちらも素晴らしく、とても豊かな音楽体験だった。(※多少のネタバレがあります)

 ロジャー・ダルトリーは、ライヴ前半がかの名作『Tommy』の全曲演奏。後半がザ・フーの代表曲を中心としたセットだった。まず『Tommy』セットだが、曲順もアレンジもほぼオリジナルに沿ったもので、ロジャーはMCを入れず最後まで一気に歌いきった。ミュージカルや映画などいろんな『Tommy』があるけれど、僕はやっぱりこのオリジナル・ヴァージョンが1番好きだ。そして、改めてこの作品自体の完成度の高さを思い知らされた。緻密で大胆なストーリーには普遍性があり、大きな筋を短い曲やフレーズで繋げていく手法は見事という他ない。それをあのロジャーの声で歌われるのだから、抗えるわけがなかった。特に“Smash the Mirror”からつづく後半は、ロジャーの歌の表現力も増して感動的だった。
 その後のセットでは、“I Can See for Miles”、“The Kids Are Alright”、“Young Man Blues”、まさかの“Blue Red and Grey”などが聴けて嬉しかった。初めて聴いたソロ・キャリアからの2曲も、どちらもいい歌だった。ロジャーは『Tommy』セットよりもリラックスして、楽しんで歌っているように見えた。飾らないまっすぐな人柄はあの歌声そのもので、68歳になった今もやんちゃでチャーミングだった。その姿に、ロジャーがまだ20代だった頃のイメージが重なる。そのことが僕にはとても印象的だった。

 ロン・セクスミスのライヴを観るのは、すごく久しぶりだった。今回はバンドを連れての来日。僕はバンドでのロンセクを観るのが初めてだったこともあり、とても新鮮だった。弾き語りのナイーヴな彼の歌も大好きだが、新作を聴くと、今の彼はきっとバンドを必要としているのだと思う。バックの4人は全員がハーモニーをつけることができて、それがサウンドに温かみと膨らみを与えていた。とはいえ、中心にあるのは、ロンセクが書く美しいメロディであり、彼の愁いを帯びたヴォーカルであることに変わりはない。セットリストは、新作からの曲を中心に、ファーストやセカンドからも何曲か演奏された。僕の知らない曲もいくつかあった。ロンセクにしてはアップテンポ気味なナンバーが多かったのも、バンドでのライヴだからだろうか。ラストは代表曲である“Secret Heart”を、それは美しいアレンジで聴かせてくれた。これがハイライトだったと僕は思う。
 ロン・セクスミスの歌は、何度も繰り返し聴くことで、じわじわと良さが滲んでくる。新しいアルバムを聴くたび、僕は最初の数曲でときめいて、途中でいくらか退屈な気持ちになる。でも、何度か聴いていくうちに、作品が体に沁み込んできて、それぞれの曲の違いが明確になってくる。そうなれば、あとは聴くほどに好きになっていくだけだ。うまく言えないのだけど、僕はそういうアーティストが好きだったりする。控えめなんだけど、音楽にはちゃんと深みがあって、けっして古くならない。サンドフィッシュ・レコードを始めたとき、僕はそういう作品をリリースしていこうと決めた。ロン・セクスミスの歌を聴くと、いつもそのときのことを思い出す。この夜もそうだった。

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2012-04-29 12:10 | diary | Comments(0)
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