風がびゅーんと吹いている。昨日の夜からやけに威勢がいい。
昨日は朝からずっと作業をしていた。作業のいいところは、せっせと手を動かせば確実に片づいていくところだ。成果が目に見えてわかるので充実感もある。そして、終わると十中八九お酒が呑みたくなる。昨日もそうだった。
ここ数日、夕焼けがとてもきれいだ。昨日もそうだった。僕は街角に立ち、自分が暮らす町の空が赤く染まっていくのを眺めた。そして、さっきよりもお酒が呑みたくなった。
でも、あともう少し仕事をしておきたかったから、僕はお酒を呑みに行くのを諦めた。知り合いがDJをしているラジオ番組が、ボブ・ディランの曲だけを2時間かけていた。おかげで、楽しい気分で仕事をすることができた。だって、ラジオから「ザ・バラード・オブ・アイラ・ヘイズ」が流れてくるなんて、ちょっとないことだと思うから。この歌は、ピーター・ラファージが作り、ジョニー・キャッシュが取り上げ、後にディランもカヴァーした。硫黄島の戦いで英雄に祭り上げられたことで、運命を翻弄されたインディアンの青年の悲しい物語。
仕事が終わると、マルタ・アルゲリッチのレコードを聴いた。リビングは肌寒く、僕は毛布にくるまった。そして、アイラ・ヘイズの短かった人生のことを、なんとなく考えた。窓の外では強い風が吹いていた。またひとつ秋が深まったような気がした。
MIYAI