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Sandfish Records Diary

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卒業

どこへ飛ぶのか。
飛ばざるのか。
飛べぬのか。
飛ぶべきか。それとも、消え去るべきか。
春はすぐそこにあるというのに。

卒業。学び終えたということ。
嘘だ。ただの計略だ。
柵は取り払われ、
僕らは羊のように放たれる。
希望と不安が高揚を生みだす。
でも、僕はしらけている。
多くの者が新たな柵を求める。
そうすることが当然だと信じてる。
柵から柵へ。
僕はますますしらけている。

空は薄曇り。
坂道も、階段も、門の色も、校舎の影も、
いつものように平べったい。
体育館に集まり、歌が聞こえ、
紙を渡される。決まり事。
教師達は演者のような笑顔。
ねぎらいと感謝の言葉を期待してる。
その願いは叶えられたり、そうでなかったり。
僕は居場所を失い、ひとりぼっち。
誰とも話したくない。
門を出て、坂道を下る。
ひとりぼっち。

柵が取り払われ、
僕らは羊のように放たれる。
どこへ飛ぶのか。
飛ぶべきか。それとも消え去るべきか。
柵の中で大きな顔をする人達。
僕はあなた達の仲間じゃない。

夜を迎えてもひとりぼっち。
僕はしらけるばかり。
あまりに静かな夜。
計略はここまで迫ってくる。
僕はしらけるばかり。
心が石のようにかちかちになる。
油断すると、そのまま沈んでしまいそうだ。
気をつけよう。

柵から柵へ。
僕も柵の中へ。
新しい退屈のはじまり。
新しい安堵と嫌悪のはじまり。
飛び立てない日々のはじまり。
本気で言いたいことがあるのなら、
言えばいい。
しかし、言葉は空虚に宙を舞うばかり。
なぜだ?なぜだ?なぜだ?

柵は取り払われる。
自分の手で。なにかの衝撃で。
揺るぎない音楽の力で。
いつの日か。
明日は遠く、そして近い。
あのとき、心をくだいてくれた人達がいたことは、
僕にもわかっていた。
でも、それに応えるだけの優しさが僕にはなかった。
きっとそうなんだ。

そして今、柵は取り払われようとしている。
12年という時を経て。
僕は胸に手をあて、誓う。
もう後戻りはしないと。
夜はあまりに静かで、
まるでなにか計略でもあるかのよう。
もしあなたがそばいなかったら、
とても耐えられそうにない。
もしあなた達がいなかったら。

卒業。学び終えたということ。
嘘だ。すべては払拭され、未来へ。
どこへ飛ぶのか。
一羽の鳥が、夕闇に染まった空を駆るように。
自由に。孤独に。ただ傷ついて。
飛ばざるのか。
飛べぬのか。
飛ぶべきか。それとも、消え去るべきか。
春はすぐそこにあるというのに。

(2013.2.3「Cane's開店12周年記念Potluckナイト」@Bar Cane'sにて朗読)
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by sandfish2007 | 2013-02-04 07:12 | diary | Comments(0)
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