曇り空。アルバイトもないのに早起きして、ひとりで卵かけご飯をかっこんだり、コーヒーをすすりながらアナログ・レコードを聴いていると、ひとりで暮らしていた長い時間を思い出す。特に朝は静かだから、ひとりで生きる孤独感をナイーブに感じることができた。僕はそこから逃れたいと思いつつ、同時に愛おしさも感じていた。
ひとりで暮らした時間は、僕の人格に決定的な影響を及ぼした。一時は、もう誰とも一緒には暮らせないと思ったこともあった。友人達と過ごす時間は大好きだったが、どうしても気をつかってしまう。くつろげるのは、部屋に帰ってひとりになれた時だけだった。もしこの時間がなくなったらしんどいだろうなと思った。でも、同時にそんな自分にうんざりもしていた。僕は本当にこんな人生を望んでいるのか?そう問いかけてみると、よくわからなかった。
ひとりでいたいのか。それとも、誰かといたいのか。それは若い頃から僕の中にある相反した感情だった。僕は長いことひとりでいることを選び、人生を折り返したところで、誰かといることを選んだ。今は新しい生活を楽しんでいる。
それでも、ひとりで暮らしていた頃に感じていた、決して拭い去ることのできない切なさは、今でも胸の奥にぺったりと貼りついたままだ。たまにそのことに気づかされる。そして、ほっとするのだ。
MIYAI