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Sandfish Records Diary

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グリーン・デイ、ブルー・ライト

よく晴れた6月の朝、
僕は見知らぬ場所にいた。
どこからか漂ってくる
半透明な煙にいぶされて目を開くと、
外界はやけにまぶしかった。
光の粒子が砕けたビスケットの粉のように散らばり、
かき集められ、
煙の向こう側へ、
微かな音を立ててから消えていった。

僕は静かに立ち上がり、
もう一度周囲を見渡してみた。
そこは間違いなく知らない場所だった。
さて、どうやって家に帰ればいいのだろう?
新緑はまぶしく、
空の光はびっくりするくらいに青い。
僕が家に帰ることを、
阻害するものはなにもなさそうだった。

グリーン・デイ、ブルー・ライト。
すべてが良心的。

でも、僕はどうすればいいのだろう?
ここがどこだかわからないし、
どうやって帰ったらいいのか、
おぼつかない。
そんな状況で、「さぁ、好きにしていいよ」
と言われても、困るのだ。

好きにしていいのが困るのなら、
誰かの言いなりになればいい。
でも、誰もなにも言ってくれないのなら、
自分でどうするか決めるしかない。

けっこうじゃないか。

グリーン・デイ、ブルー・ライト。
すべてが良心的だ。
そこが気に入らない。

商店街を歩いてみる。
誰もいない。
ずっと前からか。
2年前からか。
それとも最近のことなのか。
よそ者の僕にはわからない。

ただ、わかったことはひとつだけある。
それは、僕が家に帰れないということだ。
帰り方がわからないのだ。
自分の力じゃどうしようもないし、
誰も手を貸してくれない。
だって、ここには、
誰もいないのだから。

でも、それって、
自由ってことだろう?
ザッツ・ライト。
びっくりするくらいに自由だ。

グリーン・デイ、ブルー・ライト。
すべてが良心的。
そこが気に入らない。

時間が流れて行く。
朝から昼へ。昼から夜へ。
駅の北口にバーを見つけて入った。
すべてがアウト。
そんな店だった。
僕にはちょうどいい。
いや、ちょうどいいのかもしれない。

焼酎を注文した。
マスターと話をした。
居合わせた人が、声をかけてくれた。
僕にしては、気の利いた受け答えができたから、
みんなと楽しい時間を過ごすことができた。
そうすると、朝がやってきた。
みんなは家に帰って行った。
「もう、おしまいですよ」とマスターが言った。
「君も帰るの?」
「そりゃ、帰りますよ」
では、僕はどこに帰ればいいのだろう?
「それなら」と、マスターは言った。
「ここにいればいいですよ。
好きなだけいればいい。
夜になれば、また僕が来ますから」
窓から朝の光が射し込んでいた。
空が次第に青く染まりはじめていた。
またか、と思った。

グリーン・デイ、ブルー・ライト。
すべてが良心的。
でも、帰る場所は見つからない。

(2013.6.2「Potluck ナイト」@Bar Cane'sにて朗読)
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by sandfish2007 | 2013-06-03 07:13 | diary | Comments(0)
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