とあるバーで縁のあるミュージシャンのライヴ・レコーディングをしようという話が出ている。音響のプロと店のマスターが中心となって、それを発信するためにレーベルをやろうということだった。そこで一応レーベル業をやっている僕も意見を求められた。まぁ、深夜のバーでの酔っ払ったときの話なので、相談というほどのものではない。ただ、そのとき僕は前向きなことをほとんど言わなかった気がする。自然と口をついて出てくる言葉は、どれもネガティヴなものだった気がする。
一夜明けてから、そのことが気になって仕方なかった。どうしてそうなったのだろう?僕が話したのは、在庫を抱えること、返品のリスク、えとせとら、えとせとら。そういう現実もあることを伝えようとしたのだが、いささかマイナス面ばかりを強調していたかもしれない。つまり、うまくいったときのイメージではなく、うまくいかなかったときのことばかりを話していた気がする。
自分でレーベルを運営していながら、これからやってみようという人に前向きな話ができないというのは、実に根本的な問題だ。なぜあのとき「まずは録音してみましょう」と言えなかったのか。やってみないと何もわからないのに。そして、もし素晴らしい音楽を作ることができて、それがリスクを負ってもやる価値があると判断したなら、やればいいのだ。その方が具体的なリスク回避策も浮かんできやすいだろう。
気がついてみれば、僕は自分で自分の仕事にノーと言っていたのだと思う。好きでやっているはずなのに、なぜ僕はあんな言い方しかできなかったのか?これはやっぱり根本的な問題なのだ。
MIYAI