もしも、この町で一番いい女は誰か?
というアンケートがあったとして、
その栄えある第一位を当てろと言われたら、
僕はすぐにある女性の顔を思い浮かべるだろう。
理由としては、
彼女がずっとこの町に住んでいて知り合いも多いとか、
どうせ彼女の旦那が、
投票する僕らに無言のプレッシャーをかけてきそうだとか、
まぁ、そういった外的要因もあるにはあるが、
ほんとはそんなこと関係なくて、
きっと彼女なら、男だけじゃなく、
同性の票も集めてしまいそうだし、
なにより、あの愛くるしい笑顔を見れば、
誰だって彼女に清き1票を投じたくなることくらい、
僕にもよくわかるのだ。
彼女の名前は、レディー・レイコ。
またの名を、レンコン。
本名は、谷 玲子。
残念ながら、人妻だ。
初めて会ったのは、8年前だか9年前だか。
場所は南口にあるバーのカウンターだった。
美人なのに気さくで、
初対面の僕にも優しくしてくれた。
彼女が微笑むと、その場がぱっと華やいだ。
しかも、頭の回転がよくて、話も面白いときてる。
だから、みんな彼女に会うと夢中になってしまう。
そして、もしあの笑顔を毎日見ることができたら、
どんなにか素敵だろうと願うのだ。
しかし、妄想はここでストップ。
カウンターの中からひとりの男が、
そんな僕らに睨みをきかせているからだ。
男の名はジョージ。
そう、レディー・レイコは、
ジョージの女なのだ。
〜ザ・シーカーズ「ジョージー・ガール」〜
そして時は2013年。
初めて会った日から、
僕らは同じだけ歳を重ねたはずだ。
いろんなことが変わった。
でも、あなたの愛くるしい笑顔は
少しも変わらない。
そして、6月。
この季節の花嫁はジューン・ブライドと呼ばれて、
ちょっぴり贔屓されたりする。
それなら、今夜そんな扱いを受けるべき人が、
ここにもいるんじゃないだろうか。
その人の名は、レディー・レイコ。
またの名を、レンコン。
残念ながら人妻だけど、
彼女の笑顔は、もうジョージさんだけのものじゃない。
この町に住むみんなのものだ。
どうかいつまでも彼女が幸せでありますように。
何事も僕らからあの華やかな笑顔を奪いませんように。
なぜレディー・レイコだけが特別なのだろう?
その秘密を、今夜僕は見つけることができた気がする。
つまり、こういうことだ。
5歳でも15歳でも
20歳でも40歳でも
59歳でも、60歳でも、
いつだって男が憧れるのは、
赤を華やかに纏うことのできる女だからだ。
今宵、たくさんの祝福と感謝と尊敬を込めて、
これからもずっとその笑顔に会えますように。
この町で一番のいい女、
レディー・レイコに乾杯。
〜ハミルトン、ジョー・フランク・アンド・レイノルズ
「ドント・プル・ユア・ラヴ」〜
(2013.6.23 「たにしろれいこ還暦パーティー2次会」@Bar Cane'sにて朗読)