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Sandfish Records Diary

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43年目のペイパーバック・ライター

 ビートルズの名曲「ペイパーバック・ライター」。作家志望の青年が編集者に宛てた手紙をモチーフにした歌詞。僕は高校生の頃から文章を書くのが好きだったので、この歌詞に親しみを覚え、よく面白がって聴いたものだった。発売当時(1966年)ちょうどビートルズの日本公演があり、この曲が来日記念盤だったという。プロモーション・ビデオは本当にかっこよくて、ルックス的にはこの頃のビートルズが一番好きだったりする。

 昨晩、とあるディープ・スポットで僕は「ペイパーバック・ライター」を聴いた。当時イギリスで発売されたときの古いシングル盤で、モノラル録音だった。オープニングの印象的なコーラスの後、エレクトリック・ギターのリフが始まった瞬間、僕は身をのけぞらすことになった。思わず声を上げた。あまりに衝撃的で暴力的な音だったからだ。例えて言うなら、曇った車のフロント・ガラスをワイパーで拭き取ったとき、目に飛び込んできた鮮やかな景色を思わせた。遠くからではわからなかった山の岩肌の荒々しさや、海に入ってみて知った波の凶暴さを思わせた。それは確かにこれまで何千回と聴いてきた「ペイパーバック・ライター」だったが(ほんと何回聴いたんだろ?)、同じものにして同じものではなかった。うまい言葉が見つからないのだが、言うなれば、この歳にしてようやく巡り合った「43年目のペイパーバック・ライター」だった。

 興奮は時間がたってもくすぶった火種のように胸の底に残りつづけた。あのエレクトリック・ギターのリフが鳴り響いたときの衝撃。ドライブする中低音の魅力。バンドがひとつにまとまり、ほとばしる情熱とクールなセンスが押し引きを繰り返しながら、巨大な音の塊を聴く者にぶつけてくる。そこあるのは、高いミュージシャン・シップとすぐれた録音技術。それをヴィニール盤に刻み込むカッティングの巧みさだ。「当時は今のように高性能な再生機はなかったのに、それでも彼らはこれだけの録音をしていたんだよ」と先輩が言った。凄みとは、深みとは、そういうことを言うのだと思った。

 43年目のペイパーバック・ライター。
 
 MIYAI
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by sandfish2007 | 2013-09-22 10:28 | diary | Comments(0)
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