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Sandfish Records Diary

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リクオさんのライヴを観た夜

 先日、リクオさんのライヴを観に行った。リクオさん自身が「集大成にして現在進行形のステージをお届けします」と言っていたが、その言葉通り、足を運ぶ価値の十分ある素晴らしいステージだった。正味2時間。会場はいつもの酒場ではなく、きれいなホール。サウンドの基調になったのは、新作『HOBO HOUSE』の穏やかな空気と柔らかな光をもった世界観。それは、リクオさんが長いキャリアの中で積み上げてきた経験から生まれた本物の音楽だった。

 ライヴ前半、リクオさんがチェロとバイオリンと3人で何曲か演奏した。日頃覆われたヴェールが剥がれ落ち、リクオさんが生まれ持ったであろう、優しいがゆえの戸惑い、繊細さ、身勝手さ、傷つきやすさが、無言のまま目の前に差し出されたような印象を受けた。「あぁ、この人の音楽は、こういう心細い場所からスタートしたのかもしれないなぁ」と僕は思った。それが、音楽活動をつづける中で、必然的に、あるいは自ら選びながら、旅や酒場でのライヴを通して、タフになっていったのかもしれない。きっと思い通りにここまできたわけじゃないはずだし、だからこそ、その道程にはリアリティがあるのだ。

 新作『HOBO HOUSE』は、そんなリクオさんが辿りつき、掴んだ、美しい結晶だった。そして、この夜の演奏には、これまでの歩みを俯瞰させるようなところがあった。そのことを意図していたというよりは、滲み出たのだと思う。演奏に耳を傾けながら、僕は自分の心が奥の方で震えているのを感じた。それはきっと、リクオさんというひとりの表現者が、音楽に心をときめかせ、腕をみがき、そのときどきの状況に対処しながら、くじけることなく音楽をつづけ、自分のスタイルを模索し、いい曲を書こうとどれだけ努力してきたかが、厳然たる事実として伝わってきたからだと思う。そのひとつの集大成として、またこの先への通過点として、今ここで演奏していることに、僕は胸打たれたのだと思う。

 初めてライヴを観た夜以来(もう5年以上前のことだ)、リクオさんの音楽をリアル・ミュージックだと思ってずっと聴いてきた。この夜の演奏は、そのことを改めて認識させてくれるものだった。僕もこんな風に音楽と向き合っていけたらいいなと思う。

 MIYAI

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by sandfish2007 | 2014-06-09 10:45 | diary | Comments(0)
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