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Sandfish Records Diary

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中西文彦@サウサリート(2014年9月13日)

 中西文彦というギタリストをご存知だろうか?昨年の5月、僕は中西さんのライヴに感動し、「君は中西文彦を知っているか?」というタイトルでその夜のことを日記に書いている(こちら→link)。

 あれから1年4ヵ月。全盛期は今もつづいていた。それどころか、より進化を遂げていた。逃げ場のないソロでのライヴは、中西さんのアーティスト性が包み隠さず披露される貴重な場と言える。これが本当に素晴らしいのだ。

 アンプリファイしたクラシック・ギターにディレイをかけることで生み出されるトーンは格別で、深い湖の底を思わせた。つま弾かれる一音一音がクリアになり、曲の表情をブライトなものにしていた。カッティングはその回数を減らすことで効果を増し、一音を大切に鳴らすことで、曲は細やかな感情の起伏をもつようになっていた。中西さんのギターが今も発展途上にあることの証明だろう。

 ソロ・ギターのライヴというと、落ち着いたイメージをもちやすいが、様々なスタイルのバンドを経験してきた中西さんの場合、その辺りの事情が少しばかり異なってくる。というのも、こじんまりした印象がないのだ。まずサウンドが豊かだし、既存のスタイルから逸脱しようとする本人の意識もあってか、他にはない独自の世界が演出されることになる。昨夜のライヴでも、中西さんがまたひとつフリー・フォームに近づいた印象を僕はもった。そのことが僕にはとてもスリリングだった。

 第二部からは、パーカッションで福井豊が加わった。福井君は、とてもセンスのいいプレーヤーだ。技術的な面だけでなく、出過ぎず、かといって引き過ぎないスタンス。こうした按配を心得たパーカッショニストは意外と少ないので、貴重な存在だと思う。中西さんがフリー・フォームに寄った演奏をしても、福井君はそれを邪魔することなくリズムをキープすることができる。パーカッションが加わってからは、中西さんのギターもダイナミックに変化し、できることのレンジが広がっていくのがわかった。古くからの友人同士であり、一緒にバンドをやっていたこともある2人だから、何も言わずともわかり合える部分があるのだろう。

 昨夜は誰もが唸るようなライヴだったと思う。もし僕がどこか知らない町のバーで昨夜の演奏を聴いたら、さぞや驚くことだろう。町の小さなバーで聴くには、音楽のレベルが高過ぎる。これはもっとたくさんの人達に聴かれるべき音楽だと思うはずだ。でも、現実はそうじゃない。僕らは小さな店で中西文彦のライヴを観ることができる。それは僕らにとっては幸せなことで、中西さんにとっては少し不幸せなことなのかもしれない。・・・やっぱり不公平だな。

 というわけで、ぜひライヴに足を運んでみてください。僕はソロ・ライヴをお勧めします。内容は保証します。中西文彦、現在、全盛期です(本人はその自覚がないみたいだけど)。

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2014-09-14 12:35 | diary | Comments(0)
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