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Sandfish Records Diary

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ザ・ラスト・カーニバル

 『ワーキング・オン・ア・ドリーム』は、ブルース・スプリングスティーンの中ではポップ寄りなサウンド・メイキングがなされた作品だ。とっつきやすい佳曲がたくさん収録されており、歌詞も明るさや希望を感じさせるものが多い。昨夜はこのアルバムを歌詞カードを眺めながらと、ソファーに寝転びながらと、2回聴いた。

 このアルバムがリリースされたのは、スプリンスティーンが還暦を迎える年だった(2009年2月発売)。だから、歌の主人公も若者を想起させるものではなく、青年という感じでもなく、どちらかといえば子育てに一段落ついたくらいの大人のように思える。彼らはこれまでの愛情に感謝したり、スーパーマーケットのレジ係の女性に秘かな恋心を抱いたり、妻と笑いながらお互いの皺や白髪を数え合ったりする。発売当初はその辺がもうひとつピンとこなかったのだけど、いつしか馴染むようになった。

 僕が特に好きなのは「サプライズ、サプライズ」という曲だ。地味な歌かもしれないけど、こじんまりとした日常的な佇まいの中で、きらきらとまばゆいギターが差し込む朝陽のように鳴っている。シンプルな歌詞も美しい(対訳;三浦久)。

 神聖な夜の帳の中
 君が横になるとき
 夜の星が君の胸に
 輝く王冠をそっと置きますように
 空が光を求めて闘うとき
 昇る太陽が、君の魂を愛撫し祝福しますように

 昨夜の僕は、きっとこういう気分だったのだろう。自分のことではなく、今も苦しむ人達のことを自分勝手に思って聴いた。そして、当たり前のことを当たり前のこととして暮らせている自分のことも、やっぱり考えたりした。

 アルバムの最後で、スプリングスティーンはこの世を去ったかけがえのない友人に曲を捧げている。それは「ザ・ラスト・カーニバル」という静かな歌だ。

 あなたなしで今夜、私たちは汽車に乗る
 黒い煙が夜空を焦がし
 汽車は止まることなく走り続ける
 頭上には百万の星、あらゆる魂が
 生死を問わず神に召集され
 あなたの死を悼み
 賛美歌を歌っているかのよう

 日没、日没
 サーカス会場にはもう誰もいない
 どこにいるの今、私のハンサム・ビリー

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2015-03-12 11:48 | diary | Comments(0)
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