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Sandfish Records Diary

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夏の夜のブルース

 夏の夜にブルースをSP盤で聴いた。2年半前の冬にも聴く機会があったので、SP盤の音が凄いことは知っていたが、いざ音が飛び出してくると「おーっ!」と声を上げずにはいられなかった。おそらくライヴ演奏に一番近い録音媒体はSP盤だと思う。とりわけ音抜けの良さ、伸びやかさは驚異的で、いかに自分が日頃コンプ(圧縮)された音を聴いているのかを思い知らされる。そして、テクノロジーの発達と共に録音が良くなっていったとは限らないのだなという事実に思い当たるのだ。

 昨夜の個人的なハイライトは、戦前のブルース・マン、トミー・マクレナンの「ウイスキー・ヘッド・ウーマン」だった。1940年前後にマイクを1本だけ立てて録音したレコード。ギターを弾きながら唸るようにして歌うマクレナンの強靭な演奏を、同時進行でレコードの溝に刻み込んでいった。そのまったく加工を施していない自然な音の迫力は、筆舌に尽くしがたかった。

 SP盤は繰り返し聴くとノイズが激しくなり、再生に使用される鉄針は片面聴いたら取り替えるのが原則と言われている。材質はシェラックという天然樹脂のため大量生産にはあまり向いておらず、なにより割れやすくて保管が難しかった。そうした理由もあって、安価に量産できて丈夫な塩化ビニールのレコードにとって変わられたのかもしれない。しかし、その結果として、SP盤特有の今まさに目の前で演奏しているかのような録音を、僕らが日常的に聴く機会を失ってしまったことは、とても残念に思う。

 昨夜、SP盤で聴いたブルースは、僕を何十年も前のメンフィスやシカゴまで連れていってくれた。その生々しさ、息づかいの熱さは、時空を超えて、2015年の夏の夜にも繋がっているような気がした。(「Voices Inside」@バー・ケインズにて)

 MIYAI
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by sandfish2007 | 2015-07-19 10:05 | diary | Comments(0)
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