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Sandfish Records Diary

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賢者の石

 ヴァン・モリソンは大好きなアーティストで、レコードをせっせと集めては熱心に聴いてきた。今でも折に触れ引っぱり出す。今朝は『ザ・フィロソファーズ・ストーン』。世に未発表曲や未発表テイクを集めた作品は数あれど、これほどのものはそうないだろう。1曲づつ聴き進めるたび、「これの一体どこがボツなんだ?」という疑問符が、壊れたパソコンの画面のように連打される。

 ヴァン・モリソンほど、キャリアに渡って全盛期や充実期が長い人を、僕はすぐには思いつかない。今はさしづめ安定期といったところだろうか。とにかく、それらしい駄作が見当たらない。どのアルバムも楽しめるし、中には聴くたびに魂が震え、叫び声を上げずにはいられない傑作が何枚もあるのだから、まったく恐れ入ってしまう。そんな作品群においても、この『ザ・フィロソファーズ・ストーン』は上位に位置づけられてもおかしくないほどの内容を誇る。アウトテイクス集が…である。約20年という長い期間の録音を集めたものであるにも関わらず、不思議と統一感があり、ヴァン・モリソンならではの雄大な音楽の息吹が伝わってくる。

 例えば、「ザ・ストリート・オンリー・ニュー・ユア・ネーム」。サウンドも歌詞も実にヴァン・モリソンらしいこの曲は1975年の録音。8年後にアルバム『イナーティキュレイト・スピーチ・オブ・ザ・ハート』で別ヴァージョンが発表されることになるのだが、「このヴァージョンの一体なにが気に入らなかったのだろう?」と、そんな疑問符で頭の中がいっぱいになる。どうしたってなるのだ。

 『ザ・フィロソファーズ・ストーン』が発売されてから18年がたち、いつしか僕はこのアルバムをアウトテイクス集だと思って聴かなくなった。そういうエクスキューズはきれいさっぱり消えてしまった。これはこれだ。これこそヴァン・モリソンだ。どこまでも広がる大地の下をこんこんと流れる地下水のような、悠久の時を告げるような歌声に、ただ耳を傾けるだけでいいのだ。
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by sandfish2007 | 2016-02-18 08:03 | diary | Comments(0)
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