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Sandfish Records Diary

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love and mercy, tonight

 1週間前、ブライアン・ウィルソンのライヴを観に行った。それはブライアンのソロ公演というよりは、ブライアン・ウィルソン一座の公演といった印象だった。ブライアンの声は大分不安定になっていて、もう全編通して歌うことは難しそうだった。そこをブライアンを慕い尊敬する仲間達がバックアップしていく。ビーチ・ボーイズ時代のバンド・メイト、彼の音楽に影響を受けたミュージシャン達がブライアンを囲み、ヴォーカルを分け合い、鉄壁の演奏でブライアンが創造した美しいサウンドをステージ上で再現してみせた。

 ライヴは2部構成で、前半はヒット曲の他にもびっくりするようなレアな曲がいくつも演奏された。後半は今回のライヴの主旨である名作『ペット・サウンズ』の再現。アンコールでは全盛期のヒット曲をたたみ掛けるように披露した。僕は2階席の2列目で観ていたのだが、アンコールになると1階席は総立ちで大変な盛り上がりだった。エヴァーグリーンな曲がもつ力に、誰もが圧倒されたのだと思う。

 最後にブライアンが名曲「ラヴ&マーシー」を歌ったとき、この日のライヴのすべてを象徴しているように思えた。「世界は暴力にあふれ、人々は傷つき、やりきれない孤独を抱えている。今夜僕らに必要なのは愛と慈しみの心」。胸に温かい感情が広がった。この夜、ブライアンを中心に、バンドと観客が一体となって作り上げたのは、愛と慈しみに満ちた空間だった。ブライアン・ウィルソンという偉大な音楽家への尊敬と愛情が、このライヴを作り上げたのだと。

 ブライアンも今では73歳。老いからくる衰えは避けられない。そのことでライヴ中は複雑な気持ちにもなった。しかし、最後には嬉しい気持ちが残った。それはブライアンが音楽で僕らに与えてくれた愛を、僕らもまた愛でブライアンに返したからかもしれない。love and mercy, tonight.
 
by sandfish2007 | 2016-04-21 08:25 | diary | Comments(0)
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