1曲目はトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの「ザ・ウェイティング」だった。演奏が終わると「トム・ペティは素晴らしいソングライターだった。今夜のライヴは彼に捧げるよ」というMC。もうこれだけで来てよかったと思った。
昨夜はジャクソン・ブラウンのライヴを観にオーチャード・ホールへ。席は2階席の2列目。僕より歳上の人達に囲まれて開演を待つ。ライヴは定刻より10分ほど遅れてスタートした。そこに、このまさかのオープニングである。
ジャクソン・ブラウンの声はソウルだ。ソウル・ミュージックとはまた違うやり方で、たやすく心の奥に触れてくる。そして、魂が震えるのだ。ジェームス・テイラーやジャクソン・ブラウンがなぜ特別なのかと言えば、それは歌声が持つ力なのかもしれない。
バンドの演奏は素晴らしいものだった。とりわけヴァル・マッカラムのギターには、トーンにもプレイにも言葉にならないほどの感銘を受けた。ペダル・スティールのグレッグ・リーズとは多くの曲でソロの応酬がなされ、ジャクソンからの信頼も絶大なのがわかる。「ルッキング・イースト」をはじめ、何度も背筋がぞくぞくした。
ジャクソンは69歳になった今も、その佇まいは変わらないが、かつての若々しさとは違う滋味深さが伝わってくる。これまで多くの仲間を失ってきた。ローウェル・ジョージ、ウォーレン・ジヴォン、グレン・フライ、ヴァレリー・カーター、トム・ペティ…。この夜、ジャクソンは亡き友人たちへの想いを観客と分かち合ったように思う。
それはオープニングだけではない。自らドブロでスライドを弾いてみせた「ユア・ブライト・ベイビー・ブルース」、ジヴォンらしいロック・ナンバー「ロイヤーズ・ガンズ・アンド・マネー」、ヴァレリーとローウェルと一緒に作った「ラヴ・ニーズ・ア・ハート」、「この曲がラジオでかかると嬉しいんだ。グレン・フライと書いた曲だから」と言って歌われた「テイク・イット・イージー」。
どの演奏からも、亡き友への親しみと、もう会えない淋しさと、同じ時代を生きた喜びが伝わってきた。そこには年齢に相応しい重みがあったように思う。
こうしたスピリチュアルな面をより感動的なものにしたのが、ふたりの黒人女性コーラスだった。特に「ライヴズ・イン・ザ・バランス」では、リード・ヴォーカルをジャクソンと分け合い、このメッセージ性の強い曲に深い陰影と奥行きを与えていた。この夜に演奏された曲の中でも、とりわけ印象に残るものとなった。
休憩をはさみ、客席からのリクエストにも応えながらの3時間弱。心にまっすぐ届く歌声、素晴らしいバンド、輝きを失わない名曲の数々、亡き友への想い。ライヴの間、たくさんの感情が波のように打ち寄せた。それらの出来事は、どれもジャクソンの歌と直接結びついてはいないようで、きっとどこかで繋がっているのだろう。そんなことさえ嬉しく思えた。
1.The Waiting
2.Some Bridges
3.The Long Way Around
4.Rock Me on the Water
5.Looking East
6.Farther On
7.These Days
8.Just Say Yeah
9.Your Bright Baby Blues
<short break>
10.Something Fine
11.Lawyers Guns And Money
12.Naked Ride Home
13.Fountain Of Sorrow
14.Lives In The Balance
15.Call It A Loan
16.Love Needs A Heart
17.The Barricades of Heaven
18.Pretender
19.Doctor My Eyes
20.Running on Empty
<encore>
21.Somebody's Baby
22.Take It EasyTake It Easy