音さがしというのは、いい作品に巡り会うまで前進しない。いや、いい作品というよりは、なんらかの縁を感じる作品と言った方がいいかもしれない。聴いた瞬間になにかがひっかかる。その音楽との距離が親密なものに思える。「もしかしたら…」と期待する。そういう音をさがしている。しかし、本当に親しい友人を見つけることが難しいように、なかなか思い通りにはいかない。そういう時間が長くつづくと、見知らぬ人ばかりの町を彷徨っているような気分になる。心も少しづつ擦り減っていく。しかし、いざ巡り会ってしまえば、物事は一気に前進する。焦りがなくなり、沈んだ気持ちも忘れてしまう。まるで魔法のようだ。
ブルース・スプリングスティーンが、最新のライヴでザ・バンドの“The Weight”をカヴァーし、リヴォン・ヘルムに捧げた。その映像を観たとき、僕は深く揺さぶられた。心の重荷が洗い流されたような気持ちになった。あらゆる理屈を超えていた。音楽の力とはこういうものなんだと改めて思った。
昨日は一歩も前へ進めなかった。でも、つづけていればきっと巡り会えるだろう。
MIYAI