残雪とブルース・コバーンのレコード。ミルクを入れたコーヒー。いつもより心静かな朝。それはやはり雪のせいなんだと思う。昨日は1歩も外に出なかった。時折カーテンをずらして、窓から降りしきる雪を眺めつつ、部屋でテレビを観たり、懸賞の葉書を書いたり、鍋をつついたりと、のんびりした時間を過ごした。寒い日に暖かい部屋でじっとしているというのは、それだけでいいものだ。いつしかそう思うようになった。
かつては、よくテントを担いで寒い場所へ出かけていった。雪で覆われた景色の美しさ、その厳粛さを感じたかったのかもしれない。そういう場所では言葉も少なくなる。静まり返った世界で、遠くに木々の葉がかさつくのが聞こえた。そんな豊かさを思い出したりすると、また出かけたいなと思ったりもする。
さっき台所の窓から富士山を見たら、なんだか北国の風景みたいに思えた。この町で雪が降るというのは、ささやかな非日常だ。それも明日にはきれいになくなって、いつもの通りに戻るのだろう。
MIYAI