1年前の今頃、横浜DeNAベイスターズがCS進出を決めて歓喜し、ラスベガスのライブ会場で発生した無差別テロに胸を痛め、トム・ペティの訃報に夜空の月を見上げた。
そして、今年はジェフ・エメリックが亡くなって、悲しい夜を過ごした。ビートルズの革命的な音作りの重要な役割を担った人物だ。彼の著書「ザ・ビートルズ・サウンド最後の真実」は、僕がこれまで読んだ様々なビートルズ関連書籍の中でも、飛び抜けて面白く、驚きに溢れた1冊だった。
何気なく本のページを開くと、ちょうどこんなことが書かれてある。後に名プロデューサーとなるクリス・トーマスが、新人バンドを連れてアビイ・ロード・スタジオに現れると、ジェフにこんなことを言った。
「ヴォーカルはレノンっぽく、ドラムはリンゴっぽいサウンドにしてほしい」と。その言い方がジェフには「あたかもダイヤルをまわしたり、ボタンを押したりするのと変わらない、単純な手順であるかのように」に聞こえた。
そして、本はこう続く。
「あれは僕がビートルズのレコードのためだけに編み出したサウンドなのだ。他のアーティストために再現してやる義理などどこにもない」。
以来、ジェフはクリス・トーマスとは2度と仕事をしないようにしたという。それだけ自分がビートルズのサウンド作りに貢献しているという自負と誇りがあったのだろう。この本を読むと、彼の献身的な仕事ぶりがよくわかる。
だから、心から哀悼の意を捧げたい。あなたの常識にとらわれない創意が、世界の音楽を変えたことに感謝を込めて。